コラム

【STEP1】新しいアイデアの創出ー本当に使える3つの発想術

「新しい事業アイデア」を生み出すといっても、全く何もないところから新しいアイデアを創出することは極めて困難です。

言い換えれば、商品やサービスに関する基本コンセプトが出尽くした現代社会において、すでにあるものを組み合わせる方法でしか、アイデアを生み出すことはできないといってもよいでしょう。アイデアに関する古典的名著として知られている、ジェームス・W・ヤング著『アイデアのつくり方』でも「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない」と断言されています。

また、アップル社を創業したスティーブジョブスは、’Connecting The Dots’という言葉を用いて、創造力とは、一見関連性のない過去に経験した様々な点(出来事)と点(出来事)が後になって結びついて、新たな「何か(アイデア)」が見出されることであると述べています。

それでは、「新しいアイデア」を生み出すには、どのような方法を用いればよいのでしょうか。

それは、2つ(複数)のモノの関係性に着目して、以下の3つの考え方から想起することが考えられます。

①2つ(複数)のモノの組み合わせを考える
②2つのモノの価格や情報の差(ギャップ)を利用する
③複数のモノの中から空いているモノ(アイドル)を有効活用する

つまり、既存の2つ(複数)のモノに対して、加減乗除などの変更を加えることにより、新たなアイデア(提供価値)を生み出す発想法といえます。

これら3つの発想法に対し、以下のようなタイトルを付け、その内容について深堀していきたいと思います。

①「組み合わせ法」
②「ギャップ活用法」
③「アイドル活用法」

① 組み合わせ法 ~2つ(複数)のモノの組み合わせ~

組み合わせ法のアイデア出しは、既存の異なる要素を組み合わせる作業が中心となります。

例えば、新製品・新サービスの開発プロジェクトの場合には、技術、市場など、異なる2軸の組み合わせで考えていくと効率的に作業を進められるはずです。その際、「現在、自社で保有する中核技術やノウハウを既存の市場とは異なる新たな市場と組み合わせてみる」などというように、片方の軸を固定させるとより具体的にアイデアを発想しやすくなるでしょう。(下図参照)

具体例として、富士写真フィルムでは、デジタルカメラの登場によって既存のカメラ市場が縮小する中で、中核技術である「フィルム技術」を「写真」以外のマーケットで活かす道を模索しました。そのなかで、写真フィルムの主成分であるコラーゲンに着目し、「化粧品市場」に新たな活路を見出すことに成功したのです。

このように、中核技術・ノウハウをいかして新製品・新サービスを開発し、新規分野に売り込んだ例は少なくなく、他にもダイナマイトの原料であるニトログリセリンが心臓病の治療薬に転用されたケースなどがあげられます。

② ギャップ活用法 ―2つのモノ(市場)の価格格差、情報格差を利用―

今やグローバルビジネスでは常識となっている「世界で最も安い市場でモノを調達して、世界で最も高く売れる市場で売る」という考え方のもとになっている発想法といえます。

今日では、巨大グローバル製造業が、企画・デザインは本社で行い、生産そのものはアジア圏や東欧諸国など人件費、物価の安価な地域で行い、グローバルに展開する店舗で販売する垂直統合型のビジネスモデル(SPA)を採用しています。具体的には、GAP, ラルフローレン、ZARA, H&M, ユニクロ、IKEAなどを挙げることができ、まさに市場間の「ギャップ活用」の発想によって成功した事例といえるでしょう。

次に、近年英会話学習で普及が進む「オンライン英会話」について考えてみましょう。このビジネスが、従来の英会話学校に比して圧倒的に優位性を持つ理由は、コストにあります。まず、講師については、英語の堪能なフィリピン人講師を採用することでコストを従来の5分の1以下に下げ、オンライン学習を採用することにより、その他の付帯費用(物理的な施設等)も極限まで下げることを可能にしました。まさに2つの市場の「ギャップ活用」の事例の一つといえるでしょう。

ところで、IT業界では、アメリカで流行したものは3~5年後には必ず日本でも流行すると言われてきました。ソフトバンクの孫社長で有名な先行する市場(アメリカ)の情報をいち早く日本に取り入れて活用する「タイムマシン経営」も、2つの市場の情報格差を利用した成功例といえるでしょう。

 

③ アイドル活用法 ―空いているものを有効利用―

空いているリソース(資産)、空いているキャパシティ(容量)、空いている時間、空いている能力など・・・現代社会においてこうした無駄と思えるものは増え続けています。一方で、インターネットの発達により、現在では、こうした「アイドル=空いているもの」を見つけ出すことは非常に容易になりました。このような状況を背景に、あらゆる業界において「アイドル」が大きなビジネスチャンスになってきています。シェアハウス、ルームシェア、カーシェアリングといったシェアリングビジネスは、こうしたアイデアの発想から生まれてきたものです。顧客の混雑度によって価格を変更するダイナミックプライシングもアイドルビジネス(空いている時間の有効活用)の一種と言えるかもしれません。

具体的な事例としては、配車サービスのウーバー、民泊サービスのエアビーアンドビーなどを上げることができます(空いている資産の有効活用)が、最近はやりの「空き家再生ビジネス」もこうした発想から生まれたビジネスであると言えます。

また、これまで中小製造業(印刷業、クリーニング業など)の多くは、低い稼働率(50%以下)にもかかわらず、高額(1億円以上)の生産設備(機械)をかかえ、固定費が大きな負担となっていました。このような状況を解消するため、同業の企業間の情報をネットワーク化し、ユーザー側のオーダーに応じて、適切に発注を割り振るしくみを構築し、業界全体として機械の稼働率を向上させることが可能となりました。(空いているキャパシティの有効利用)このようなしくみを仲介サービスとして提供し、成功している事例としては、ネット印刷のラクスル、宅配クリーニングのリネット等があげられます。

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