コラム

CRMの本質は顧客体験の向上

初期のCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)は、SFA(セールスフォースオートメーション)から進化した経緯もあり、顧客情報の蓄積、活用による会社全体としての営業力の強化(売上の向上)、販売チャネルのマルチ化(対面、電話、Web)による販売の効率化を目指すものであり、企業側の視点に立ったものでした。(下図参照)しかしながら、近年では「モノ」消費から「コト」消費への移行、ネットの進展による「情報の民主化」の実現により、顧客を起点としたCRMシステムが主流になってきました。具体的には、顧客の購買体験、使用体験の向上を主眼に置いたシステムデザインが行われるようになってきたわけです。

しかしそれでもなお、顧客体験という視点に立つと、1企業が提供するCRMシステムには限界があります。なぜなら、特に購入前段階において、顧客は、他社も含めた本音の比較評価情報をもとに製品を検討、購入したいからです。それに対し、企業側は自社の弱点を積極的には話したくはありませんし、まして他社の優位性を強調することもしません。これが1企業によるCRMシステムの限界になるわけです。

それではどのような解決策が考えられるでしょうか。例えば、中立で、信頼できる第三者機関(プラットフォーマー)が、実際のユーザーの口コミ情報等を収集し、顧客にリコメンドするしくみが考えられ、各メーカーはその機関と連携することが考えられます。(それにより、顧客は各メーカーの製品詳細情報もワンストップで同時に取得できます。)ただし、この第三者機関はいわゆる業界団体とは違い、独立した「顧客を代表する機関(会社)」でなければならず、また、存続し続けるためにも、マネタイズできるしくみが必要となります。

ここで、具体的なケースを考えてみましょう。美容・化粧品業界における「アットコスメ」の事例についてです。「アットコスメ」は㈱アイスタイルが運営する日本最大の化粧品の口コミ情報サイトです。本音・中立・大量の口コミ情報を武器に、消費者の信頼を勝ち取り、今や、資生堂、カネボウ、花王といったメーカーからサイトへの広告、市場調査依頼を受けるまでに成長しています。(Win-Winの関係を構築)また、アマゾンとも競合せず、連携することで共存の道を開きました。今や最強の販促手段である口コミ情報を活用し、情報提供プラットフォーマーの地位を確立した同社の戦略は見事というほかはありません。筆者は「アットコスメ」のビジネスモデルは他の業界でも応用できるのではないかと考えています。参考までに、同「ビジネスモデル」を下記に掲載します。(下記ビジネスモデルは「一橋MBA戦略分析ケースブック」(東洋経済新報社)の掲載内容をもとに、筆者が作成)

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